○火災保険
生命保険会社と損害保険会社は微妙に違います。ここではもちろん、損害保険の方。
どちらも万が一という場合に備えるという点では同じですが、生命保険の死亡保険は1億でも2億でも入れますが、火災保険は、家の時価以上の保険は入れません。
3000万の家に1億の保険を掛けて、燃えたら、大きな家が買えた、なんてことは無いのです。
まず、火災保険を語る前に失火責任法について説明します。
これは簡単に言うと、お隣の家が火事になって自分の家も燃えたら、よほどのことがない限り、お隣に賠償責任はないという決まりになっているのです。
民法的には、隣の責任なのになんで?って感じですが、いくら責任があってもお隣に財力がなければ払って貰えませんよね、だから最初から責任はないですよってことになっているのです。(ただし、重大な過失の場合を除きます)
だから、自分名義の家を買ったら、火災保険にはまず入る、これ原則です。ま、普通は購入時に不動産屋さんが当然勧めてきますので普通は入っていますね。
火災保険は、家の広さ、木造か鉄筋か、住む地域、でほぼ自動的に保険料が決まります。ローン融資を受けるときには火災保険加入が条件になっていることが多く、どこの損害保険会社が得とか損とかはあまり聞きません。信頼できる大手の保険屋さんなら間違いないでしょう。
考慮する点は3つ、
○家だけでなく、家財も入るかどうか、
○再調達価額特約をつけるかどうか
○地震保険に入るかどうか、
通常は、上から順に考えます。そして、下に行くほど保険料は上がります。
家財の保険は説明しなくても良いですね。高価な家具のある方、電気製品がある方、火災は免れても水浸しになったってこともありますから、入っておく方が無難です。
再調達価額というのは特約の一つで、火災保険で支払われる額というのは、丁度、自動車の車両保険と同じで、年々価値が下がっていくということを前提に支払われます。10年も経つと価値は大幅に下がって、万が一の時は、小さな家すら建てられないということになります。そのため、この特約をつけて、その額まで補償しようというものです。
地震保険、こいつは、説明するほどに入りたくなくなる保険です。まず、地震の場合、火災保険では補償されません。地震保険は保険料が高い(火災保険の約2倍になる)上に、補償は貧弱。
地震保険の補償の仕方ですが、まず、最大でも火災保険の半分しか支払われません。火災保険2000万でも、地震で倒壊したら1000万。これは全壊の場合で、半壊や一部損壊では、その半分、5%といった額です。1000万円の5%と言えば50万、一部損壊ではこういう額になってしまいます。さらに、大規模地震が起こったら、、、保険会社は一度に支払いを迫られて破綻、ってことがないように、あまりに大きな地震だったら、保険会社が破綻しない範囲で減額されて支払われる、という事になっています。
こんな地震保険ですが、それでも、万が一地震で家が倒壊して住むところが無くなる人は入っておいた方が良いとお勧めしています。逆に、他に住むところがある、実家に帰れば良い、いつでも賃貸に引っ越すよ、っていう方は、よく考えてください。
最近日本でも地震が増えてきているので、平成19年からはこの地震保険の所得控除(損害保険)が新設され、所得税で5万円・住民税で2.5万円が控除されることになりました。(従来の火災保険等の控除、最大1.5万は廃止)。
また、従来の地震保険を補完する意味で、火災保険に付帯しなくても加入できる新しいタイプの火災保険もでてきています。ただし、これはあくまでも補完。大きな補償(保険金)はかけられません。
○自動車保険
自動車保険は最近過当競争ぎみです。
いろいろな保険が出てきました。
走行距離が短い人は安いとか、ゴールド免許で安くなるとか。
事故時(加害者の時)に、お見舞い用に花束代5000円を出すという特約がつけられる保険も出てきています。なお、よく聞かれる質問に、年末調整とか確定申告の控除でつかう損害保険料控除が使えるのか使えないのかというのがあります。結論を言うと自動車保険は使えません。平成19年以降の損保控除は原則地震保険のみとなりました。
さて自動車保険
○賠償保険:対人対物は1億円以上(無制限が望ましい)
○傷害保険:搭乗者傷害など
○車両保険:自損事故・盗難など
このあたりがポイントで、それぞれに額が設定でき、保険料が決まります。
自動車保険は等級制度が取られており、無事故=保険金の支払いがなければ年々保険料は安くなり、逆に、保険金支払いがあれば次の年の保険料は高くなります。また、保険会社を変えても、通常この等級は引き継がれます。
最近はいろいろな特約があって、5万以下のチョイ当て自損事故なら等級が変わらないという特約や、事故時(加害者時)にお見舞いの花束代5000円、などという特約が付帯できる保険もあるようです。
SAP保険では示談交渉サービスが付帯されていますが、残念ながら、その対応は、保険会社や担当者で善し悪しがあるようです。これは事故当事者の考え方でもめる場合もあれば、担当者の扱う件数が多すぎて手が回らない、などいろいろなことがあるようです。
注意点があります。自分が止まっている時に相手がぶつかってきた、自分の責任割合0。こんなとき、自分の保険からは支払う必要がないですよね、ということは、、、、示談交渉サービスが使えない。
自分の責任割合0で事故。損害は車両のみ。
さぁどうします。示談交渉は自分でしなければいけません。
相手がいい人だったら交渉もスムーズですが、そうでなければ、3回くらい電話したらめげてきます。
損害額が100万くらいになる事故なら、私なら、1時間1万円で弁護士相談して裁判した方が良いかどうか聞きますね。で、交通裁判に明るい弁護士を紹介して貰って、具体的な話に入る。弁護士報酬50万かかったとしても泣き寝入りよりはまし。こんな感じで秤にかけます。
保険会社の立場で言うと、保険担当者は自分の会社が支払う額を決めるために示談交渉するのでそれがないならなるべくなら払いたくない。この心理は、双方の保険会社の担当者に付随します。だって日頃顔をあわせているお仲間同士ですから。
こんなときでも示談交渉するためには別の特約を付ける必要があります。弁護士費用特約。最近はセットになっているものが増えてきているようです。
雑学豆知識:
○もの凄い古いプレミア車両と事故:
通常の自動車保険は、経過年数で価値を計算しますので、どんなにオークションで高く取引されている車であっても、年数経過で車両価値は低くなっていきます。古い車は価値0。査定は0なんです。まあ、見舞金程度は保険会社も認めると思いますが、当事者同士で非常にもめる。こういう車と事故を起こすともめるのです。
○対物無制限の理由:
交差点で関係車両3台の事故、そのうち1台がコンビニにつっこんだ。
コンビニにとっては迷惑な話です。で、誰に損害賠償を請求するか。
法律では、コンビニは3台誰に対しても請求できます。お金を持っている人に請求すればいい。あとは当事者で示談でも裁判でも勝手にしてくれよ、ってことになっています。 もし、他2台が無保険車だったり対物保険金が少なかったりしたら。。。
対物保険料って、余り高くなくて、5000万で1億でも大差ありません。1000円しないと思います。だったら安心料で無制限にしておきましょう。
こういう場合もあります。
ベンツ5台乗ったトレーラーと事故。正面衝突ならこちらが大破でむこうは無傷なんてことになりますが、ひょっとすると、ハンドル切って溝に落ちて横転、なんてことになるかもしれません。5000万くらいの物損は十分ありえます。
○知っていて欲しい事故時の治療費
もの凄く誤解されています。自動車事故の治療費。
健康保険が使えないという誤解。これは、半分あたっていて半分間違い。
まず、治療費ですが、普通に骨折で1ヶ月入院15万円。3割負担だから本来の治療費は45万円。この45万円について、医療機関は自動車保険に請求する。というのが本筋なのですが、これは健康保険内の治療をしたときであって、健康保険を使えば2回のレントゲンだったのを健康保険じゃないからと5回撮ったとか、骨折を止める金属ボルトを健康保険なら1本を2本使ったとか。だいたい2倍になると思いましょう。実は、自由診療の保険点数と健康保険の点数が違うというところに原因があります。自由診療だと3割負担ではない上に治療費は2倍。同じ治療でも2〜3倍かかることが多い。
自賠責保険の傷害事故は120万円まで補償されますが、自由診療の計算だと簡単にこの額を越えます。もし、相手が無保険車とか、自分にも責任があって自己負担が出そうであったら、健康保険内の治療で、と言いましょう。
この誤解、医療機関でも多く、「交通事故は自由診療になります、健康保険は使えません」と明言されることも非常に多いです。交通事故の診療=金づるが来た、なんていう理解があるのかも知れません。
一旦健康保険が払って、あとから健康保険組合が事故の当事者に請求するという方法もありますので、まずは、健康保険で治療。医者が「自由診療しかダメ」って言っても、「そんなことはない。厚生省からの通達知らないの?」
って言いましょう。
そうしないと、あとで、もの凄い額が請求されるってことがありますので要注意です。
※なお、医師会では、健康保険は相互扶助を基にした医療制度であり、加害者の存在する交通事故の治療については、健康保険制度をはずれる=自由診療であるという立場を表明しています。これが各医療機関において「交通事故は自由診療です」という言い分になっています。
しかし厚生省の見解は若干異なります。莫大な治療費がかかり、それが払えない(加害者が払えないというほか、責任割合のため負担が増える場合もあり得ます)場合、国民を保護することができない。このため厚労省は健康保険を通した保険治療を行い、割合に応じてその額を健康保険組合が加害者に請求するよう通達を出しています。つまり、とりあえず、自由診療ではなく保険診療は可能であるということです。
(莫大な治療費が未納になったら、医療機関も困ると思うんですけどね。。。。)
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